オーパ! 開高 健

こんにちは。もぞ太です。

旅、冒険、自然などをテーマにした本を紹介します。

今回は、開高健さんの「オーパ!」です。

ピラニアの顔面ドアップに真っ赤な筆でオーパ!と書かれたこの本の表紙は、迫力満点で一目見たら忘れられません。

そもそも、オーパ!って何?魚?

ページを開くとすぐに答えがありました。
ブラジルでは驚いたり、感嘆したりするとき、「オーパ!」というのだそうです。

ブラジルで釣りをするために旅に出た開高さんが、アマゾン川の雄大さ、偉大さに何度「オーパ!」を感じたことか。

亡くなられて30年以上が経ちますが、未だ開高さんの生きざまは色褪せず、その作品は多くの人を惹きつけます。

釣り好きの人はもちろん、釣りをしない私のような人間でも楽しめる旅の本です。

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永遠に幸せになりたかったら・・・

本の冒頭、開高さんは中国の古諺を引用されています。

一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら、豚を殺してたべなさい。
永遠に、幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい。

釣りとはそれ程までに人を惹きつける魅力があるものなのでしょう。
開高さんの釣狂ぶりを読み進めるうちに、この古い諺の意味が分かった気がしました。
とにかく楽しそうに、また命がけで釣りをする開高さんの様子が伝わってきます。

また、本書を他の旅本と一線を画すものにしているのが、掲載されている多くの写真のすばらしさです。
釣りの画は臨場感があり大迫力。自然の画は静かさや激しさが伝わってくるよう。現地の人々は、生き生きとしており、アマゾンに生きる力強さを感じさせます。
文章を読むのが苦手な方でも、写真を見るだけで楽しめてしまうのではないでしょうか。

しかし、私が本書で最も印象的だったのは、開高さんがピラニアやピラルクやドラドといったアマゾンの魚たちと格闘しているところではありませんでした。
それは、ブラジルを離れる日が間近に迫った日の開高さんの、寂しさ、帰りたくなさ、が描かれた部分でした。
「肩を殴られたような衝撃があり、一瞬で私は崩れてしまった。」と開高さんは語っています。
それ程までに、ブラジルでの釣りの日々が夢のようであり、充実したものであったのでしょう。
語り口はさすがの含蓄に富んだ言い回しですが、その裏の心は少年のように純粋で、ただただ「帰りたくない!」とだだをこねる子供のようでもあります。この純粋さが、開高さんの魅力なのだろうなぁと、しみじみ感じるのでした。

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開高健の言葉

このふしぎなーと私には思えるのだがーみんなのおっとりしたおおらかさは、いつまでも私の記憶にのこった。極貧のはずの人びとがまことに淡々と鷹揚なのである。人びとのこの態度は釣りの史前的豪奢とおなじほどに私の眼にきざみこまれた。(「オーパ!/第三章 八月の光」より抜粋)

体を洗う赤貧のほかに何も所有していないのだったが、見たところ、この人たちは小さなことで声をあげて笑いころげ、悠々とし、私たちをとらえる、朦朧としているのに鋭い、あの、正体の知れない不安や焦燥に侵食されている気配はまったく見かけられないようであった。(「オーパ!/第四章 心は淋しき狩人」より抜粋)

土が匂い、葉が匂う。これからさき、前途には、故国があるだけである。知りぬいたものが待っているだけである。口をひらこうとして思わず知らず閉じてしまいたくなる暮らしがあるだけである。膨張、展開、奇異、驚愕の、傷もなければ黴も無い日々はすでに過ぎ去ってしまった。手錠付きの脱走は終わった。羊群声なく牧舎に帰る。
河。森。未明。黄昏。
魚。鰐。猿。花。
チャオ!(「オーパ!/第八章 愉しみと日々」より抜粋)

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