蜜蜂と遠雷 恩田 陸

こんにちは。もぞ太です。

ここ数年で読んだ本の中でもダントツに読み応えがあり、途中何度も鳥肌が立った。

恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を紹介します。

直木賞と本屋大賞を史上初のW受賞したことで知られるこの本。読んでみて、それも納得。

早く先を読みたいって気持ちが強くて、どんどん読み進めるんだけど、同じくらいこの本が終わってほしくない、読み終わりたくない、まだまだこの物語の中に浸っていたいって気持ちになる。

そして、読み終わった後の、この読後感!余韻!1週間くらいは続きそうだ・・・。

クラシック音楽の知識なんて全くない、ピアノももちろん弾けません。

でもね、そんな私でもこの本のすごさは体感できました。いやー、やばかった。

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ざーっとした、あらすじ。

物語は4人のピアニストを中心に描かれています。

かつて天才ピアノ少女と呼ばれるも、母の死を期に人前でピアノが弾けなくなった栄伝亜夜。

名門ジュリアード音楽院で天才との呼び声が高い、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。

「生活者の音楽」を表現する、コンクール最年長出演者、普段は楽器店で働く高島明石。

そして、ピアノ界に突如として現れた少年、風間塵。彼は偉大な天才ピアニスト、ユウジ・フォン=ホフマンの推薦状を持っていた。

芳ヶ江ピアノコンクールで2週間にわたって繰り広げられる、ピアニストたちの戦い。

それぞれに思いを抱え、自分たちの音楽を奏でるピアニストたち。

まるでコンクールを客席で聴いているかのような臨場感!

果たして、優勝するのは誰なのか?

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風間塵の圧倒的な個性。

個性豊かな登場人物の中でも、ひときわ異彩を放つ存在が、風間塵。

彼のキャラクターが、この物語において最も重要なアクセントとなっています。

彼の「悪魔的な」演奏。「多幸感と嫌悪感が紙一重の演奏」に観客は熱狂します。

他界したユウジ・フォン=ホフマンが見出した才能は、ベテラン審査員をもってしても計り知れないものでした。

ユウジ・フォン=ホフマンの推薦状には、こう書かれています。

『皆さんに、カザマ・ジンをお送りする。文字通り、彼は「ギフト」である。恐らくは、天から我々への。だが、勘違いしてはいけない。試されているのは彼ではなく、私であり、審査員の皆さんなのだ。
彼を「体験」すればお分かりになるだろうが、彼は決して甘い恩寵などではない。彼は劇薬なのだ。中には彼を嫌悪し、増悪し、拒絶する者もいるだろう。しかし、それもまた彼の真実であり、彼を「体験」する者の中にある真実なのだ。
彼を本物の「ギフト」とするか、それとも「災厄」にしてしまうのかは、皆さん、いや、我々にかかっている。』

ユウジ・フォン=ホフマンが残した「ギフト」という言葉・・・。

審査員のひとりである嵯峨三枝子は、ホフマンが贈った「ギフト」の本当の意味にたどり着いたとき、感激し、涙を浮かべます。

主人公のひとりである栄伝亜夜は、風間塵の演奏を触媒として2週間のコンクール期間中に大きな成長を遂げます。

「蜜蜂と遠雷」というタイトルについて、明確に語られる描写はないのですが、おそらく、風間塵が幼い日に初めて、自然の中に「音楽」を感じた時の記憶が、「蜜蜂と遠雷」というタイトルに繋がっているのだと思います。

間違いなく、この小説は、風間塵が居なくては成り立たない物語です。

映画もおすすめ!でも、やっぱり原作!

最後に少しだけ、映画の話もしたいと思います。

まず感動したのは、俳優さんたちの演奏の凄まじさ!

え?自分で弾いてるの?としか思えない!

普通、ピアニストの物語を映像化する時って、俳優さんの手元は映っていなかったりするものですが、この映画は手元がはっきりと映っているシーンが沢山あって、迫力満点です。

ストーリーはおおむね小説と同じなのですが、やはり時間の制約がある分、キャラクターを端折っていたり、設定が微妙に原作と違う部分があります。

映画の主人公は、栄伝亜夜(松岡茉優)です。

彼女が幼少期に閉ざしてしまった心を、徐々に開放していく様子にフォーカスしています。

原作を読まずに、映画だけ観ても楽しめる内容になっています。

ただ、強いて言わせてもらえば、風間塵(鈴鹿央士)のキャラクターがもっと強く描かれて欲しかった。

おそらく、原作を先に読んでから映画を観た人は、同じように感じるんじゃないかと思います。

原作の風間塵の個性が凄まじいので、なんとなく映画での塵くんの描かれ方が弱いように感じてしまう。

また、原作は「音楽」と「自然」の繋がり、「音楽とは何か」といったものが裏テーマとして、物語の底流に流れている気がします。

「フィボナッチ数列」が、あえて2回も出てくるのは、自然の法則や完璧さ、自然=音楽=風間塵、何言ってるかよく分からなくなってきましたが、そんな事を読者に印象付けるためなのかもしれない。

とにかく、「蜜蜂と遠雷」をより深く楽しみたい方は、原作を読まれること強くお勧めします

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