神々の山嶺 夢枕 獏

こんにちは。もぞ太です。

旅、冒険、自然などをテーマにした本を紹介します。

今回は、夢枕獏さんの「神々の山嶺」です。

この作品は、第11回柴田錬三郎賞を受賞し、映画化、漫画化されています。

主人公の思考を深く深く読み進めていく行為は、登山にも通じるものがある気がします。

上下巻合わせると1,000ページを超える大作ですが、読み進める程にストーリーに引き込まれ、一気読み間違いなしの名作です。

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あらすじ

主人公の深町誠は、カトマンドゥの土産物屋で古ぼけたカメラを見つけます。ベストポケット・オートグラフィック・コダック・スペシャル。1924年、イギリス人登山家のマロニーがエヴェレストへ挑んだ際に持っていたカメラです。マロニーは頂上付近で目撃されたのを最後に、消息を絶っています。その後、何人もの登山家がエヴェレストへ挑み、敗れ、世界初のエヴェレスト登頂は1953年のイギリス隊メンバーであった、ニュージーランド人のヒラリーとシェルパのテンジンによって成されます。
マロニーが登頂に成功したか否かは、エベレスト登山史上最大の謎とされてきました。もし、マロニーが登頂した証拠が見つかれば、エヴェレストの登山史を根底から覆すことになります。深町が見つけたカメラは、その可能性を秘めていました。
エヴェレスト頂上付近にあるはずのマロニーのカメラが、なぜカトマンドゥの土産物屋で売られていたのか。深町はその経緯を探る中で、カメラを盗まれてしまいます。取り返すべく行動するも、深町の手にカメラは戻りませんでした。
そんな中、深町はビカール・サンと名乗る日本人と出会います。彼こそが、この物語のもう一人の主人公、羽生丈二です。羽生は過去、数々の難所を登攀し、伝説的な存在となっていましたが、ある事件以降、日本から姿を消していました。その羽生丈二とカトマンドゥで出会ったのです。
帰国した深町は、羽生について調べ始めます。羽生は幼くして家族を亡くし、孤独さを埋めるように山にのめり込んでいきました。羽生丈二の名前が知れ渡ったきっかけは、冬季の鬼スラ登攀でした。谷川岳の一ノ倉沢にある鬼殺しのスラブ。通称、鬼スラ。この登攀を機に、羽生は次々と難しい岩壁を登攀していきます。あえて難しいコースを選択し、そこを登ってしまう羽生の登攀は天才的なものでしたが、ザイルをともにするパートナーへの配慮に欠ける行為が多く、次第に登山界から浮いた存在となっていきます。そして、東京山岳協会のヒマラヤ遠征で羽生は事件を起こし、日本から姿を消しました。
深町は羽生のことを知るほどに、羽生という男に引き込まれていきます。マロニーのカメラをきっかけに羽生と出会い、カメラのこと以上に、羽生という人間に惹かれていきます。日本人の羽生が、なぜビカール・サンと名を変えカトマンドゥに居るのか。羽生が山を辞めるはずはない。羽生は何を狙っているのか。深町は羽生がカトマンドゥに居る理由について、ある仮設を立てます。羽生は、とんでもないことをやろうとしているのではないか。もう一度羽生に会うために、深町は再びカトマンドゥへ向かいます。

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羽生丈二の言葉

いいか。
やすむな。
やすむなんておれはゆるさないぞ。
ゆるさない。
やすむときは死ぬときだ。
生きているあいだはやすまない。
やすまない。
おれが、おれにやくそくできるただひとつのこと。
やすまない。
あしが動かなければ、手であるけ。
てがうごかなければゆびでゆけ。
ゆびがうごかなければ歯で雪をゆきをかみながらあるけ。
はもだめになったら、目であるけ。
目でゆけ。
目でゆくんだ。
めでにらみながらめであるけ。
めでもだめだったらそれでもなんでもかんでもどうしようもなくなったらほんとうにほんとうのほんとうにどうしようもなくなったらほんとうにほんとうにほんとうにほんとうのほんとうにどうしようもなくほんとうにだめだったらほんとうにだめだったらほんとうに、もう、こんかぎりあるこうとしてもうだめだったらほんとうにだめだったらだめだったらほんとうにもううごけなくなってうごけなくなったら
思え。
ありったけのこころでおもえ。
(二十二章 神々の座 より抜粋)

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