こんにちは。もぞ太です。
旅、冒険、自然などをテーマにした本を紹介します。
今回は、椎名誠さんの「インドでわしも考えた」です。
ずいぶん前になりますが、私もインドへ一人旅に行きました。
その事前準備として読んでみた本が、この「インドでわしも考えた」と、偶然にも本書の解説をしている妹尾河童さんの「河童が覗いたインド」でした。
どちらの本もユーモアたっぷりで、出発前のわくわくする気持ちが倍増したのを思い出します。
地上三メートルを浮き上がるヨガの達人を探す旅
インド人は皆、朝から晩までカレーを食べているのか?
カースト制度はまだ生きているのか?
なぜターバンを巻くのか?
インドの女性は皆サリーしか着ないのか?
などなど、多くの疑問がありながらも、椎名さんが今回の旅のメインテーマにしたものは、インドのヨガ行者は空中に浮かぶ術を持っているのか?というものでした。
インドへの旅のメインテーマはまさしくこれなのだ!椎名さんはスルドク確信し、夜空を見上げ大きくうなずいたのでした。
かくして、椎名さんと記者のP・タカハシ、カメラマンの山本カメラの3人は、空中に浮かぶヨガ行者を探す旅にでます。
灼熱のインドに降り立った3人を待っていたものは、インド政府観光局がこしらえた、「正しいインド観光旅行」とでも言うべきな、見事にパッケージングされたプログラムでした。サリーが似合うインド美人なガイドさんに気を使い、なかなか宙に浮かぶヨガ行者を探していると言い出せない椎名さん。
「〇〇見たいか?」「〇〇に行きたいか?」と美人ガイドに問われ、「見たい見たい」「行きたい行きたい」とこたえてしまう3人。
はたして、こんな感じで旅の目的は成就されるのでしょうか。
おなじみの超長熟語を織り交ぜながら、椎名さんの語りのおもしろさに、腹を抱えて笑えます。
特に、お土産物屋さんでの攻防は秀逸で、抱腹絶倒ものです。
少年のような純粋な目線で観察し、おっさんの頭で思いふける考察には、意外な説得力があります。
掲載されている多くの写真は、そのほとんどが現地に生活する人々を撮ったもので、圧倒され惹き込まれます。
旅に出ることが困難な社会ですが、この本を読み、しばし現実から解放され、また現実に戻るのでした。
椎名誠の言葉
しかしおれはそういうものをまったく無視して現実学的見地からもう一つの 「サリーちゃんの秘密」を見つけてしまうのであった。
それはまことに単純ながら「サリーを着たインドの女性は美しい」ということである。カルカッタのスラム街で見たサリーを着た乞食女も美しかったし、一流ホテルで見た上品な初老のインド婦人もドキリとするほど美しかった。(「インドでわしも考えた/サリーの秘密はインドの秘密なのだ」より抜粋)
どういうわけかこの二人に強引にすすめられ、まもなくおれは来世のゴキブリ化もしくはカメレオン化等を予防するためガンガーの中にざぶりと入った。水は思った以上にひんやりと気持ちよくいかにも何か人間の奥深いところに効き目がありそうな気がした。(「インドでわしも考えた/ガンガーの赤い叫びが川面を裂いた」より抜粋)
それでもアカンベーをした神々の前に花を捧げ、ひれ伏している老人たちの姿を見ると、なにか自分ももう少し大きく大事なものを考えなければいけないのだろうなぁ、と思うもののそれがどういうものであるのか一向にわからないのだ。(「インドでわしも考えた/死者たちのよろこびをのせてガンガーは今日も流れる」より抜粋)
コメント